アメリカで事業を始めるときに知っておくべき税金の基礎知識

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しかし、アメリカへ事業を進出したり、販路を拡大したりする際、税金事情を把握しておくことは成功への第一歩です。
特に法人税は、事業の収益管理や節税対策に直結する重要なポイントとなります。
連邦法人税と州法人税の仕組みを理解し、適切な対策を講じることで、税務リスクを抑えつつコスト削減を図ることが可能です。
この記事を読むことで、アメリカの法人税や州ごとの税制度の違い、さらには事業に影響を与えるその他の税制についての基礎知識を得ることができます。
これにより、税務リスクを軽減し、事業計画をより確実に進める準備が整います。
事業の成功を左右する税制の知識を深め、コストを最小限に抑える方法を一緒に学びましょう。
それでは、まずはアメリカの連邦法人税から見ていきます。
アメリカで事業をする際にかかる法人税
アメリカで事業を始める際、法人税についての理解は最優先課題だと言えます。
なぜなら、法人税は収益を適切に管理し、コストを抑える上で大きな影響を与える要素だからです。
ここでは、法人税の以下の2種類について解説します。
- 連邦法人税
- 州法人税
両者の基本的な仕組みや違いについて見ていきましょう。
1. 連邦法人税
「連邦法人税」は、アメリカ国内の法人や、国内に恒久的施設を持つ外国法人に適用される税金です。
税率は一律21%で、2018年の税制改革で導入されました。
この税率は企業規模や収益額で変動せず、どの企業も一定であるのが特徴です。
課税対象は、アメリカ国内で得た収益に加え、場合によっては全世界所得が含まれることもあります。
多国籍企業の場合、移転価格ルールへの対応が必要です。
適切な経費や控除の計上が重要であるため、プロの税理士に依頼することをおすすめします。
2. 州法人税
「州法人税」は、州ごとに設定されている税金です。税率や課税方法も州によって異なります。
例えば、ネバダ州やワシントン州では法人所得税が課されません。
その一方で、2024年時点での最高税率を誇るミネソタ州では、法人税率が9.8%に設定されています。
一部の州ではフランチャイズ税や、売上高や資産規模に基づく課税方式が採用されています。
アメリカでの事業拠点を選定する際は、州の税制度を事前に調査することが事業コスト削減の鍵となります。
これらの情報を基に、アメリカでの法人税の基礎を理解し、事業運営における税務対応を計画的に進めましょう。
「アメリカの最新情報が調べられない」という方は弊社グロスペリティのような海外進出コンサルを利用するのがおすすめです。
法人税以外の事業に関する税制
アメリカで事業を運営する際、法人税以外にもさまざまな税制が適用されます。
ここでは、以下の3つの税金について見ていきます。
- 日米租税条約
- 所得税
- その他法人に関わる税制
税金を制するものがビジネスを制するとも言われています。海外進出を成功させるためにも、必ずチェックしておきましょう。
税制①:日米租税条約
「日米租税条約」は、二重課税を防ぐための枠組みです。この条約に基づき、アメリカに恒久的施設(たとえば支店や工場)を持たない日本法人は、原則としてアメリカで課税されません。
2019年8月30日に改正された日米租税条約により、税制面でいくつかの重要な改正が行われました。
まず、配当の源泉税免除が緩和され、持株割合が50%以上で、保有期間が6カ月以上の場合に免税が適用されます。
また、利子への課税は従来の10%から免除に変更されました。
さらに、仲裁制度が導入され、税務当局間で解決できない場合、第三者委員会が仲裁し、問題を解決します。
これらの改正により、日米間の経済活動がさらに促進されることが期待されます。
ただし、条約の恩恵を受けるためには、適切な書類の準備が依然として重要です。「W-8BEN-Eフォーム」の提出に加え、改正後の条件を満たしていることを証明する書類が必要となる場合もあります。
税制②:所得税
所得税は、事業収益から経費を差し引いた純利益に課されます。源泉徴収制度がないため、年間4回の予定納税が義務付けられています。
特に自営業者には、社会保障税やメディケア税に関連する追加負担が発生します。
予定納税を怠ると罰則金が課されることがあるため、正確な収益予測と計画的な支払いが重要です。
税制③:その他の法人に関わる税制
法人税以外にも、固定資産税や在庫に対する課税、州ごとの消費税徴収義務などが存在します。
また、多国籍企業に対しては「GILTI(Global Intangible Low-Taxed Income)ルール」が適用され、海外所得にも課税される場合があります。
これらの税制は複雑で多岐にわたるため、専門家による助言を受けることをおすすめします。
適切な対応を行うことで、税務リスクを抑え、事業運営をスムーズに進められます。
アメリカの法人税に関する注意点3つ
アメリカで事業を運営する際、法人税についていくつか注意すべきポイントがあります。
- 確定申告のタイミング
- 予定納税は年に4回
- 州によって税法が異なる
ひとつずつ見ていきましょう。
注意点①:確定申告のタイミング
アメリカの法人税の確定申告期限は、通常、会計年度終了後3か月半以内に設定されています。
例えば、12月に決算を迎える企業の場合、申告期限は翌年の3月15日となります。
延長申請を行えば最大6か月の延長が可能です。ただし、延長は申告手続きに限られるので、納税額そのものは期限内に支払う必要がある点には注意しましょう。
確定申告や納付を怠ると罰則が科されます。納税は早めの準備が大切です。
注意点②:予定納税は年に4回
予定納税は、年間納付額を4回に分けて支払う制度です。年間の税額が500ドルを超えると見込まれる企業は、この制度に従う必要があります。
不足納付が発生すると、罰則金(Underpayment Penalty)が課される可能性があります。
そのため、前年実績や当年見積値を基準に計算し、適切な金額を納付することが求められます。
海外進出を始めてする企業にとって、支払うべき税金の計算は非常に複雑です。
また、そこにリソースを取られて、メイン事業の拡大が疎かになってしまっては本末転倒。
アメリカの税金事情に詳しい税理士などもいるので、そのような専門家に相談するのがおすすめです。
注意点③:州によって税法が異なる
アメリカの州ごとの税法は一律ではなく、法人所得税やフランチャイズ税、売上税などの課税方式が異なります。
また、一部の州では特定業種向けの税額控除や補助金制度が用意されています。
例えば、アイオワ州では、2021年の12%から2024年には7.1%まで税率が引き下げられるなど、州法人税の引き下げが進んでいます。
単に税率を比較するだけでなく、事業環境や優遇措置を含めた総合的な判断が必要です。
まとめ:アメリカ事業の税金事情を正確に把握しよう
アメリカで事業を始める際、税制の基礎を理解することは不可欠です。
法人税や所得税だけでなく、州ごとの税制や日米租税条約といった幅広い視点で税務対応を計画することが、事業成功の支えとなってくれるでしょう。
税制は頻繁に改正されるため、最新情報を常に確認し、必要に応じて専門家の助言を得ることが重要です。
適切な税務対応により、コストを最小限に抑え、事業運営を効率的に進めることができます。
アメリカへの事業進出を検討されている方は、弊社「グロスペリティ」にお気軽にお問い合わせください。
税金事情や営業、市場調査など、海外進出で直面する課題について、プロのコンサルタントとしてサポートいたします。
監修者

岩﨑 正隆 / 代表取締役
福岡県出身。九州大学大学院卒業後、兼松株式会社にて米国間の輸出入業務や新規事業の立ち上げ、シカゴでの米国事業のマネジメントに従事。帰国後はスタートアップ企業にて海外事業の立ち上げを経験。自らのスキル・経験を基により多くの企業の海外進出を支援するために、2023年に株式会社グロスペリティを設立。