アメリカ進出した日本企業の成功事例をご紹介します。

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アメリカは、世界最大の消費市場であり、テクノロジーや金融などの分野でグローバルスタンダードを形成しているため、日本企業にとって大きな成長機会を提供しています。
しかし、アメリカ市場では競争が激しく、文化やビジネス習慣の違いも大きいため、成功するには入念な戦略と適応力が求められます。
本記事では、アメリカ進出に成功した日本企業の事例を紹介し、成功の秘訣を探ります。
1.UNIQLO(ファーストリテイリング)
UNIQLOは、2005年にニューヨーク・ソーホーにアメリカ初の店舗をオープンしました。
当初はブランドの認知度の低さやアメリカの消費者ニーズとのズレにより、苦戦を強いられていました。その背景から、徹底的な市場調査と戦略の見直しを行い、2010年以降から積極的に拡大を進めました。
UNIQLOがアメリカで成功した要因は、以下の3つが考えられます。
ブランド戦略の見直し
UNIQLOは、日本やアジアではファストファッションブランドとして人気を博していましたが、アメリカでは、H&MやZARAなどの競合と明確に差別化を図る必要がありました。
そこでUNIQLOは、アメリカでは『ファッションブランド』よりも『高品質なライフウェア』という機能性や快適さを重視したコンセプトを前面に押し出し、成功しました。
立地選定の工夫
UNIQLOというブランドの認知を高めるために、2011年にニューヨークの5番街という大都市の主要エリアに大規模なフラッグシップストアを設置しました。
ニューヨーク以外にも、シカゴやロサンゼルスなどの主要都市にも戦略的に展開し、現地のトレンドに敏感な消費者層にアプローチを図りました。
デジタルマーケティングの活用
アメリカではオンラインショップが主流なため、UNIQLOはECサイトの強化に注力しました。
また、SNSを活用したプロモーションにより、アメリカの消費者に直接アプローチすることで、若年層の支持を得ることに成功しました。
2.Toyota
トヨタは、1957年にアメリカ市場に参入しましたが、売り上げは低迷し失敗しています。
その後の戦略転換が成功し、現在ではアメリカ市場でトップクラスのシェアを誇る自動車メーカーとなっています。
現在、トヨタはアメリカ市場において年間200万台以上を販売し、現地工場も数多く運営しています。特に、ハイブリッド車である『プリウス』やSUV車の『RAV4』が人気を集めています。
電動化や自動運転技術の進化とともに、今後もさらなる成長が期待されています。トヨタがアメリカで成功した要因は、以下の3つが考えられます。
現地生産の強化
Toyotaは、1984年にアメリカ国内での生産を開始し、現地の雇用を創出することでアメリカ市場との結びつきを強化しました。
これにより、輸入関税の影響を受けにくくなり、コスト削減と供給の安定化を実現しました。
品質と燃費の向上
1970年代のオイルショックの後、燃費の良い車への需要が高まり、トヨタは『カムリ』や『カローラ』などの燃費性能に優れた車を生産・販売し、多くのアメリカ消費者たちからの支持を獲得しました。
また、Toyotaの車は耐久性と信頼性が高いことから、「壊れにくい車」というブランドイメージを確立させました。
顧客満足度の向上
Toyotaは、アメリカ全土に広がる強力なディーラー網を築き、販売・アフターサービスの充実を図りました。また、「トヨタ・ケア」と呼ばれるメンテナンスプログラムを導入し、長期的な顧客満足度の向上に努めました。
それにより、顧客のリピート増加につなげることに成功しました。
3.SONY
SONYは、1950年代からアメリカ市場への輸出を開始し、1970年代には現地法人を設立しています。
ウォークマンやプレイステーション、BRAVIAテレビなど、数多くのヒット商品を生み出し、成功を収めています。SONYの画期的な製品がアメリカの消費者たちのライフスタイルを変え、根付いていっています。
ソニーがアメリカで成功した要因は、以下の3つが考えられます。
革新的な製品開発
SONYは、ウォークマンやCDプレイヤーなど、家で楽しむものだった音楽を「外に持ち運ぶ」という新しい文化を生みだし、アメリカでも大ヒットしています。
また、プレイステーションは1994年に発売してからモデルとしては「プレイステーション5」まで進化をし続けており、任天堂やセガなどの競合にも負けないブランドへと成長しました。
ブランディングの成功
「ソニー=イノベーション」というイメージを定着させ、アメリカ市場でも高いブランド価値を築くことに成功しました。
また、シンプルでスタイリッシュなデザインを好む傾向のあるアメリカ消費者たちから、SONY製品の「性能の高さ」や「デザインの美しさ」も大きく評価されています。
エンターテイメント事業の展開
映画会社「ソニー・ピクチャーズ」を買収し、ハリウッド映画市場にも参入したことで、ゲームと映画の融合など、多角的な戦略を展開することに成功しました。
また、映画や音楽事業も好調であり、総合的なエンターテイメント企業としての地位を揺るがないものにしています。
4.MUJI(無印良品)
無印良品は、2007年にアメリカ市場へ進出しています。
当初は認知度が低く苦戦しましたが、サスティナブルな商品のラインナップや、シンプルなデザインが徐々にアメリカ消費者たちに受け入れられ、現在ではニューヨークやロサンゼルスなどの主要都市で成功を収めています。
無印良品がアメリカで成功した要因は、以下の3つが考えられます。
シンプルで洗練されたデザイン
無印良品の商品は、無駄を省いたシンプルなデザインが特徴です。
アメリカではミニマリズム志向の消費者が増えてきており、この無印良品のコンセプトは高く評価されています。シンプルでありながら機能的なデザインは、幅広い消費者層に受け入れられています。
現地ニーズに適応
アメリカ向けの商品開発を強化し、サイズやデザインを現地市場に合わせる工夫を施しました。
また、環境に配慮した商品づくりを重視していることは、環境意識の高いアメリカ消費者たちから高く支持されています。再生素材の活用や簡素な包装、長く使えるデザインなど、サスティナビリティを意識した取り組みが成功の1つの要因です。
オンライン販売の強化
無印良品は、公式オンラインストアの充実や、スマホアプリの「MUJI passport」の導入などの取り組みを強化しています。
2024年8月の業績予想では、オンライン販売の伸長を見込み、前年同期比で10.1%の増加を計画していました。
無印良品はアメリカ市場で着実に成長しており、今後も店舗拡大とEC強化を進める方針を発表しています。
アメリカ進出した日本企業の成功事例のまとめ
今回は4つのアメリカで成功した日本企業をご紹介しましたが、どの企業にも成功している共通点があることが分かります。
ます、徹底した市場調査です。
アメリカの消費者ニーズを徹底的に分析、そして理解し、それに合った商品やサービスを展開しています。
次に、ブランド価値の確立です。
競争が激しい市場のなかで、独自のブランドの価値を強調することで、アメリカ消費者たちに認知してもらい人気度を高めていくことが大切です。
そして、デジタル戦略の活用です。
今やECサイトやSNSの活用は必要不可欠だと言えるでしょう。
これらを駆使し、直接アメリカの消費者たちとつながるマーケティング戦略が重要です。このほかにも、アメリカで成功を収めるための重要ポイントはあると思います。
ご紹介した日本企業はいずれも大企業ではありますが、どの企業もはじめからうまくいったわけではありません。アメリカ消費者のニーズに応えるべく、何度もトライアンドエラーを繰り返して、今日の成功を収めています。
アメリカ市場で成功した日本企業のこれまでの取り組みをぜひ参考にし、アメリカで成功する企業への道を歩んでいきましょう。
監修者

岩﨑 正隆 / 代表取締役
福岡県出身。九州大学大学院卒業後、兼松株式会社にて米国間の輸出入業務や新規事業の立ち上げ、シカゴでの米国事業のマネジメントに従事。帰国後はスタートアップ企業にて海外事業の立ち上げを経験。自らのスキル・経験を基により多くの企業の海外進出を支援するために、2023年に株式会社グロスペリティを設立。