2025年03月28日
日本企業がアメリカで取得すべきビジネス認証

アメリカ市場は、巨大でビジネスチャンスも豊富であり、競争も激しいのが特徴で、その中で成功を収めるためには、法規制を守り、業界における信頼性を高めることが重要になります。
アメリカでは、日本と異なり業界ごとに取得が求められるさまざまな認証やライセンスがあり、適切なビジネス認証の取得は、消費者からの信頼を得るだけでなく、取引先との関係も強化されビジネスの発展を支える重要な要素となります。
本記事では、日本企業がアメリカで事業を展開する際に取得すべき主要なビジネス認証について解説します。
一般的なビジネス認証
事業許可証(Business License)
アメリカで事業を開始する場合、ほとんどの州や市で事業許可証が必要です。
事業許可証は、事業を合法的に運営するために必要な基本的な認証といえます。
事業許可証の取得は、営業地域や事業の種類によって異なります。
例えば、製造業、小売業、飲食業、そしてサービス業など、それぞれ異なる規制が適用される場合があり、ビジネスを行う地域の要求事項をきちんと把握し、事前に申請を行いましょう。
事業許可証を持っていないと、罰金や営業停止などのリスクがあるため、事業を展開する前に必ず確認しておくことが重要です。
雇用者識別番号(Employer Identification Number)
雇用者識別番号(EIN)は、アメリカ国内で法人や合同会社(LLC)を運営する場合や、従業員を雇う場合に必要な認証です。
EINは内国歳入庁(IRS)にて発行されます。
EINを持っていないと、税務申告や給与の支払いができなくなるため、事業をスタートする前に必ず取得しましょう。
さらに、EINは銀行口座の開設にも必要で、アメリカ国内での金融取引や契約締結にも重要となり、多くの企業が事業開始前にEINを取得し、税務管理のスムーズな運営を行っています。
売上税許可証(Sales Tax Permit)
アメリカの多くの州では、商品の販売やサービスの提供に対して売上税を徴収することが義務付けられています。
そのため、小売業や飲食業など、商品やサービスを販売するビジネスには、売上税許可証の取得が求められます。
州によって売上税の率や適用範囲が異なるため、事業を行う州の規制を事前に調べ、適切な手続きを行うことが大切であり、オンラインビジネスの場合でも、特定の州に拠点を構えていたり、顧客がいたりする場合は売上税の申告には注意しましょう。
食品・飲食業の認証
FDA認証(アメリカ食品医薬品局認証)
アメリカで食品や飲料、サプリメントを販売する場合、FDA(Food and Drug Administration)の基準を満たすことが求められます。
輸入食品を取り扱う企業には、FDAへの登録が必要です。
FDA認証を取得すると、製品の安全性が保証されるため、消費者や取引先からの信頼を得ることができます。
また、FDA認証は食品に含まれる成分や製造方法に関する厳格な基準を設けており、これらを満たすことでアメリカ国内での販売ができるようになります。
HACCP認証(食品安全管理システム)
食品業界での信頼性を高めるため、HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Points)認証の取得は重要です。
HACCP認証は食品の製造から流通までの全過程において、安全を確保するための国際的な標準になります。
大手スーパーマーケットやレストランチェーンと取引を行う場合、HACCP認証の取得が条件となることが多く、HACCP認証の取得は、消費者に対して「安全な食品を提供している」という信頼感を与えられます。
USDA Organic認証(オーガニック食品認証)
アメリカのオーガニック食品市場は急速に成長しており、USDA(アメリカ農務省:United States Department of Agriculture)によるオーガニック認証を受けることで、「USDA Organic」のラベルを表示が可能になります。
ラベルを付けることで、環境に配慮した製品であることを証明でき、健康志向の高い消費者にアピールでき、USDA Organic認証を取得すると、エコフレンドリーで持続可能な企業としてのブランドイメージの強化につながります。
健康・美容・医療業の認証
NSF認証(健康食品・サプリメントの品質保証)
NSF(National Sanitation Foundation)認証は、健康食品やサプリメント業界でにおいて重要な認証です。
NSF認証は、製品が厳しい品質管理基準をクリアし、消費者の健康に対する安全性を証明することができます。
また、アメリカの消費者は「安全で品質の高い製品」を求める傾向がかなり強いため、NSF認証の取得は、製品の信頼性の向上に大きく影響し、製品にNSF認証のラベルを表示することで、アメリカ消費者に安全性や信頼性をアピールしていきましょう。
GMP認証(適正製造規範)
GMP(Good Manufacturing Practice)認証は、製品の品質を保証するための製造基準です。
特に医薬品や化粧品、健康食品などの製造にはGMP認証が求められます。
製造過程の全ての段階において、高い品質基準が守られていることを証明するため、消費者の信頼を得るためには欠かせません。
また、NSF認証を持つことで、製品の品質管理が国際的な基準に準拠していることを消費者にアピールすることができます。
FSC認証(化粧品原材料のトレーサビリティ)
化粧品業界では、使用する原材料の調達元や環境への影響が重要視されています。
FSC(Forest Stewardship Council)認証を受けた原材料を使用することで、環境への配慮を示し、エシカルな企業としてのブランドイメージを構築できます。
アメリカの消費者は環境への配慮を重視する傾向が強まっており、FSC認証の取得は競争力向上にも影響します。
品質・製造管理の認証
ISO 9001(品質管理システム)
ISO 9001は、企業の品質管理体制が整っていることを示す国際標準です。
製造業や小売業にとってISO 9001の取得は、無駄なコストを削減できたり、品質の一貫性を高めることができたりすることにつながるため、製品やサービスの品質向上に取り組んでいることを消費者にアピールできます。
ISO 9001を取得すると、取引先や消費者に対して信頼感を与えられるだけでなく、長期的なビジネス関係の構築につながる可能性も高めることができます。
ISO 14001(環境マネジメントシステム)
ISO 14001は、企業の環境への取り組みを証明する認証であり、持続可能な経営を行っていることを消費者に伝えられます。
ISO 14001を取得すると、資源の効率的な使用や廃棄物の削減などの環境保護に積極的に取り組んでいると認知され、環境意識の高いアメリカ消費者から信頼を得られやすくなります。環境への配慮は、アメリカ消費者にとって非常に重要な要素です。
企業の社会的責任(CSR)の一環としても大きな役割を果たすでしょう。
UL認証(製品安全規格)
UL(Underwriters Laboratories)認証は、製品の安全性を保証する認証であり、特に電化製品や消費者向け製品を販売する企業にとって重要です。
消費者は、UL認証を持つ製品に対して安全性を信頼し、安心して購入することができます。この認証を取得することで、製品の信頼性を高め、広範囲の消費者市場にアプローチが可能になります。
まとめ
アメリカ市場での成功を目指す日本企業にとって、適切なビジネス認証の取得は欠かせません。
各業界に必要な認証を積極的に取得すると、製品やサービスの信頼性が向上し、アメリカ市場での競争力を高めることができます。また、一般的なビジネス認証はもちろん、ISO認証やFDA、NSFなどの業界特有の規制を守り、取引先や消費者の信頼を得ましょう。
計画的にビジネス認証の取得を進め、アメリカ市場において安心かつ価値のある製品やサービスを提供し、ビジネスの成功に向かっていきましょう。
監修者

岩﨑 正隆 / 代表取締役
福岡県出身。九州大学大学院卒業後、兼松株式会社にて米国間の輸出入業務や新規事業の立ち上げ、シカゴでの米国事業のマネジメントに従事。帰国後はスタートアップ企業にて海外事業の立ち上げを経験。自らのスキル・経験を基により多くの企業の海外進出を支援するために、2023年に株式会社グロスペリティを設立。