【2026年最新】デミニミス廃止が越境ECに与える影響と日本企業が取るべき対策

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「デミニミス」という言葉をご存じでしょうか。これまで日本から米国へ800ドル以下の商品を販売する際、関税が免除されるという大きなメリットをもたらしてきた制度です。しかし2025年8月29日、この制度が廃止されました。
この変更は、越境EC事業者にとって単なる制度変更にとどまらず、ビジネスモデルの根幹を揺るがす重大な転換点でした。すでに影響を受け、対応に追われている事業者も多いことと思います。まだ対策が十分でない方は、早急に体制を見直す必要があります。
本記事では、デミニミス廃止の背景・内容・影響、そして日本企業が取るべき対策を体系的に解説します。
デミニミスとは何か?制度の基礎知識
デミニミス(de minimis)とは、国際貿易における通関制度の一つで、輸入品の価値が一定額以下であれば関税や輸入消費税の徴収を免除し、通関手続きを簡素化する仕組みです。ラテン語で「取るに足らないもの」という意味を持ちます。
各国がそれぞれ独自の上限額を設定しており、たとえば日本は約1万円、EUは150ユーロ(2021年にVAT免除は廃止済み)などとなっています。
米国の場合、800ドル以下の貨物には関税がかからない特例が存在しており、この規定によって日本からの小口輸出や越境ECは大きな恩恵を受けてきました。
具体的には次のようなメリットがありました。
・800ドル以下の商品に関税・消費税がかからない
・通関書類の大幅な簡素化(詳細な原産地証明や品目分類が不要)
・通関時間の短縮による迅速な配送の実現
・参入障壁が低く、中小・個人事業者でも米国消費者へ直販が可能
特に越境EC事業者にとって、この制度は米国市場参入の重要な足がかりとなっており、小規模事業者でも比較的低いハードルで米国消費者に直接商品を販売することが可能でした。
なぜ廃止されたのか?背景と経緯
廃止の直接的なきっかけは、中国系ECプラットフォームの台頭です。廃止決定の背景には、中国系ECプラットフォームであるTemu(テム)やSHEIN(シーイン)などが、デミニミス制度を利用して大量の低価格商品を米国市場に流入させていることへの対抗措置という側面があります。
制度廃止に至るまでの主な経緯は以下の通りです。
2025年2月1日:トランプ大統領が中国製品への追加関税と合わせ、デミニミス廃止の大統領令に署名(その後、システム整備未完了を理由に一時延期)
2025年5月2日:中国・香港からの輸入品に対するデミニミス免除が先行廃止
2025年7月4日に成立した「大きく美しい1つの法」で2027年7月末と定めていた全世界を対象としたデミニミス制度の廃止時期が、同年7月30日付の大統領令で2025年8月29日に前倒しされることが発表されました。
2025年8月15日:米国税関・国境警備局(CBP)が国際郵便に関するガイダンスを公開し、2025年8月29日:全世界を対象としたデミニミス制度が正式に廃止。
この決定は、当初2027年7月1日に予定されていた廃止を大幅に前倒しするものとなります。
廃止後に何が変わったのか?具体的な影響
越境EC事業者への影響
廃止により、従来800米ドル以下の輸入品に適用されていた免税措置が終了し、米国向けのすべての荷物に関税および消費税が課されるようになりました。この変更は、日本国内の中小企業や越境EC事業者(Shopify、eBay、Amazon など)、さらには転送サービス事業者など、米国向けに出荷を行う多くの事業者に直接的な影響を与えています。
廃止後は、貨物の申告価格に関わらず必ず関税が課されます。最低15%、アパレルでは30%近くになるケースもあります。消費者の購入コストは上昇し、事業者は「関税の扱い方」をめぐってビジネスモデルの再設計を迫られています。
また、eBayやShopifyなどのプラットフォームも、関税・税金は出品者が事前に負担するDDP(Delivered Duty Paid)方式を前提とした設計に移行しています。
物流・通関への影響
物流面でも大きな変化が生じました。デミニミス廃止を受け、日本郵便は2025年8月27日から、内容品価格が100米ドルを超える個人間の贈答品や販売品を包有する米国宛て郵便物について、一時的に引き受けを停止しました。
その後、日本郵便は2026年4月14日より米国向け郵便物の引受を再開しましたが、100〜800米ドル以下の荷物はCBP認定事業者(現在はZonos社のみ)のアプリで関税を事前支払いするDDPラベルが必須となります。また対応できるのは指定郵便局のみとなっています。
代替手段として、FedExやDHL、ヤマト国際宅急便といったクーリエ系配送業者がありますが、日本郵便に比べて送料が高額になりがちです。
通関面では、これまで簡易申告で済んでいた商品も正式な輸入申告が必要となり、HSコードの正確な記載や原産地証明などの書類準備が求められます。
消費者(バイヤー)への影響
消費者側でも、これまで無関税で届いていた商品に関税・通関手数料が上乗せされるようになりました。たとえば5,000円(約33ドル)の商品であっても関税の対象となり、関税率・輸送コストによっては実質的な購入価格が大幅に上昇しています。
カートを離脱するユーザーが増加したり、「関税は誰が払うのか」という問い合わせが増えたりするなど、購買体験全体への影響も実際に出ています。
業種・販売形態別の影響度チェック
影響が大きい事業者
・eBay・Etsy・Shopifyなどで800ドル以下の商品を中心に販売している個人・中小事業者
・アパレル・雑貨・食品・コスメなど低単価商品を扱う事業者
・日本郵便(EMS・小形包装物)を主力配送手段としていた事業者
・通関・関税の知識が乏しく、自社で対応が難しい事業者
影響が比較的小さい事業者
・800ドルを大きく超える高価格帯商品(工芸品・高級品など)を扱う事業者
・すでにAmazon FBA(アメリカ国内倉庫)を活用している事業者
・DDP対応の物流パートナーやフォワーダーと連携済みの事業者
日本企業が取るべき4つの対策
対策1:DDP(関税込み)配送体制への切り替え
最も重要な対応がDDPへの移行です。DDPとは「Delivered Duty Paid(関税込み配送)」の略で、輸出者(販売者)が通関・関税の費用まで負担して届ける方式です。消費者が受取時に追加費用を支払う必要がなくなるため、購買体験が向上し、カート離脱を防ぎやすくなります。
具体的には、ZonosやFlowなどの関税計算・DDP対応サービスの導入や、DHLやFedExなどDDP対応の国際宅配業者との契約を検討しましょう。
対策2:価格設定の見直しと関税コストの吸収戦略
関税コストを商品価格に転嫁するか、物流コスト削減で吸収するかを検討する必要があります。一律で値上げするのではなく、商品カテゴリや競合状況に応じた価格戦略を立てることが重要です。
また、HS(関税分類)コードを正確に把握し、適用される関税率を事前に計算したうえで利益率を再試算することが欠かせません。
対策3:物流パートナー・フォワーダーの見直し
日本郵便のEMSは2026年4月に米国向けの引受を再開しましたが、100〜800ドルの商品はCBP認定事業者(Zonos社など)を通じた関税の事前支払いが必要で、対応できる郵便局も限られています。以前と同じ感覚でEMSを使い続けることはできないため、自社の商品価格帯や発送量に合わせた物流体制の再確認が必要です。
DHLやFedExなどのクーリエ業者はDDP対応がしやすい反面、送料が高くなります。また、米国内に在庫を置くAmazon FBAや3PL(物流アウトソース)の活用も、通関問題を根本的に解消できる有力な選択肢です。
対策4:HS コードの正確な把握と書類整備
正式な輸入申告が必要となった今、商品のHSコード(関税分類コード)を正確に把握し、適切な通関書類を準備することが必須となります。
誤ったHSコードの申告はペナルティや通関遅延を招くリスクがあります。不安な場合は通関士や貿易専門のコンサルタントに相談することをおすすめします。
まとめ
米国貿易政策の大転換となるデミニミス廃止は、1930年関税法以来続いてきた制度の根本的な見直しであり、単なる関税制度の変更を超えて、国際貿易の構造そのものに影響を与えた重要な政策転換です。
廃止から約10ヶ月が経過した現在、すでに多くの事業者がその影響を実感しています。日本郵便のEMSは条件付きで再開されたものの、関税の事前支払い対応が必要となるなど、以前の利便性がそのまま戻ったわけではありません。DDP体制の整備・物流パートナーの見直し・HSコードの正確な把握・価格戦略の再設計、この4点についてまだ対応が十分でない場合は、早急に取り組むことをおすすめします。
こうした制度変更を乗り越えた事業者には、しっかりとした越境EC基盤を持つ強みが生まれています。改めて自社の体制を見直し、米国市場での競争優位を確立するきっかけにしていただければ幸いです。
グロスペリティは、ロサンゼルスに現地法人(Glosperity USA Inc.)を構え、米国内の倉庫・物流ネットワークも活用した一気通貫の支援体制を持っており、越境ECに関しては、以下のような支援をご提供しています。
・EC構築・運用のアドバイザリー支援
・新規EC構築サポート(Shopifyなど)
・既存EC設定・運用代行(Amazon USなど)
・米国での在庫・物流網構築支援
デミニミス廃止への対応、米国向け越境EC戦略の設計、物流スキームの見直しなど、どんな段階のご相談でも構いません。まずはグロスペリティの無料相談会をご活用ください。
監修者
岩﨑 正隆 / 代表取締役
福岡県出身。九州大学大学院卒業後、兼松株式会社にて米国間の輸出入業務や新規事業の立ち上げ、シカゴでの米国事業のマネジメントに従事。帰国後はスタートアップ企業にて海外事業の立ち上げを経験。自らのスキル・経験を基により多くの企業の海外進出を支援するために、2023年に株式会社グロスペリティを設立。

